愛好家ステージのパート4,3,2,1の順に舞台の袖で出番を待つ。
パート4から奥(上手側)に位置を決めていく。
バスフルートやアルトフルートを吹く先生たちは先に登壇していたのかもしれない。
係の人の指示に従って、出来るだけ静かに進んでいく。
それぞれの位置が決まって、譜面とフルートの向きを確認して待つうち指揮者が登場。
指揮棒が振られ、ホフマンの舟歌の湖面に立つさざなみのような音が聞こえてくるのを待って、フルートを構える。
2小節目の5拍目から櫓が小さく湖面を打つように短く吹く。
ここでフライングを犯すと台無しなので、指揮者を見ながら一斉に、けれどもあくまで小さく入る。
あとは今まで練習してきたように流れに乗って、他のパートと掛け合いのようにして進んでいく。
pp(ピアニッシモ)で10小節、ラッシシッラと吹いていくところは一応譜面上で数えながら、終わりの方は指揮者を見てここまでと確認して、次の音に移っていく。
71小節目のメロディー部分に揃って入れた。
このあとの8分休符と4分休符が交互に来る部分で間違わないよう、曲の流れに注意しながら、頭の中でカウントを取っていく。少しばらつきがあるようだったが休符部分をすぎるとぴったり揃ってきた。
そして「天国と地獄」序曲。
指使いが難しいのと息継ぎをする隙がないので、肝心のff(フォルテシモ)のところで力尽きてそれまでとの違いが出せなくなってしまうが、そのへんは上手な人に任せるしかない。
そして曲調はモデラートからアンダンテに変わると、こんなにもゆっくりでいいのかと待ちきれないほどになるのだが、譜面にはメガネマーク(ここでは指揮者を見て合わせなさいということ)を付けてある。
そして4分音符8分音符のあとの装飾音の入り、最後の高音のミをたっぷり伸ばしつつ指揮者を見ながらクレッシェンド・ディミヌエンド。
曲が「カンカン」に変わると2/4拍子のアレグロ(快活に)。
1カッコ、2カッコがあるので戻る場所を見失わないように、同じような音の連続なので指揮者を見たあと譜面に戻れるように、教室の先生は4小節ずつ斜線を引いておくように教えてくれた。
もう何十回となく練習したので、曲の流れがわかってきたことと斜線のおかげで、自分の位置がすぐわかるようになっていた。
曲は軽快にどんどん進んでいっても、気持ちよく大きな音を出す訳にはいかない。
あくまでもフルートだけの編成なので、音の強弱は譜面通り、3パートはp(ピアノ)が多いので、小さな音でしかも歯切れよく、ダレないようにきちんとリズムを取っていく。
最後は8小節、一息に伸ばして伸ばして、リズムを刻んで、2小節半伸ばすレは指揮者を見て一斉に止める。
一呼吸あって会場から大きな拍手が沸き起こる。
指揮者は会場に挨拶し、振り返って笑顔でわれわれ演奏者に拍手を送っている。
うまくいったようだ。
静かに時を待つ。
ステージが暗転して、退席を促される。
袖に行くと大合奏に参加の人たちが待ち構えているので、エレベーターホールの方まで人で埋まってしまった。
総勢約150名。
パート4から並び直す。
私はパート3の上。今回もほぼセンターの最上段。山◯さんとペアを組んで楽譜は2人で共有する。
全員入るとリハーサルの時よりも狭くなった感じで、フルートがぶつかりはしないかと心配になる。
おたがいにちょっと身を捩りながら何とか空間を保持する。
参加者全員による大合奏「魅惑のフレンチ・ポップス」
プロの先生が各パートに2人ずつくらい入っている。
できれば先生が左側に入ってくれると音が聞き取りやすいのだが、今回は私の右隣に男の先生が入った。
これじゃ、先生の音でタイミングをはかるというより、自分の間違いがすぐバレてしまう。
指揮者の塚田先生が会場に向かって挨拶をし、振り返って手を振り下ろす。
「シェルブールの雨傘」は頭から吹き始める。
はやる気持ちを抑えてあくまでもP(ピアノ)で流れをつくる。
7小節と1拍半のあと、♭ミから駆け上がっていくと同時にクレッシェンドでmf(メゾフォルテ)。他のパートを追いかけるようにしてメロディー部分に入り、rit(リトルダンド)で次の曲に移っていく。
「白い恋人達」
聞き馴染みのある曲だが、トリルキーを使ったり、中間部のミから高音のミに移る時にどうしても力が入ってしまったり。でも全体的にはゆったりと、吹いていて気持ち良い。
「男と女」の入りも、4分休符のあと一音ずつにフェルマータが掛かっているので、指揮者を見ていないと合わせられない。
4/4、4/2が繰り返され、しばらく他のパートを聴いたあと、またしても4分休符・8分休符のあとに高音部の連続でP(ピアノ)となっているのだが、自分ではそんなに大きな音は出ないので音量よりもできるだけ正確に音を出すようにする。
最後の部分は次の曲に移るために♯や♭や♮を繰り返し、ゆっくりとクレッシェンドを付けていく。
「うたかたの恋」♭5つは何調だったか。でも自分のパートは使う音が決まっているのでちょっとルビを振っておけば大丈夫。
音の強弱が一番肝心らしい。
「キャラバンの到着」ジャズっぽいスイングの聴いた曲。
最初楽譜を見た時、13小節休んだあとの入るところが分からないし、デモ用のCDを聴いたらますますこの曲と自分のパートの関係が分からなくなって途方に暮れた。
教室の先生に相談して、実際に吹いていただいて曲調をつかんだ。
理解するまでずいぶん掛かったが、先生が吹くとカッコイイ。とくに8分休符のあとの♭シ♭ラソファ♭ミーーー♭ラソファ♭ミレにスイングを付けるとすごくおしゃれなんだが、自分でやってみるとどうもモタモタして都会的な感じは出ない。
あとグリッサンドがきちんとできるといいと思って、何度も練習してみたが、グリッサンドだけ取り出してやると出来ても、流れの中では指がついていかない。
本番のこのステージでも出来は50%くらい。でもちょっと装飾音が付いただけでも良しとしよう。
「枯葉」低音部のミからドを無理のない響く音を、しかもp(ピアノ)で出したい。
休符のあと次へ。
「愛の讃歌」へと変わると、他のパートとの絡みの和音が美しい。
テンポを変えたり強弱をつけたりしながらメロディーラインをたっぷり取っているので、吹く方にとっても気持ち良いが、会場にもゆったりと重厚な和音が響いているんじゃないだろうか。
「ボレロ」
3/4拍子の曲なのだが、自分としてはリズムの取りにくい曲。
4分音符・8分音符・16分音符が絡み合っている上、小節をまたいでスラーが掛かっているからだろうか。
以前、和太鼓の第一人者林英哲さんと山下洋輔さんのコラボを聴きに行った時に、林英哲さんですら最後までリズムを刻むのが難しいと仰っていたので、自分が混乱するのはしかたない。
特に注意しなければならないのは中盤のソの音が二分音符2つと8分音符がスラーでつながった音の長さのあとにレの4分音符と付点8分音符がきているところの長さの感覚。
この長さの感覚は自信が持てないので、他の人の音を注意深く聴いて合わせていく。
pp(ピアニッシモ)から始まった曲が後半ff(フォルテシモ)になり、指使いは難しいものの、今まで抑えていたのを一気に吐き出し最高潮へ持っていく。
曲調が変わり6連符のところで指揮者を見て、ここ!というところで一斉に止める。
やりきった。
万雷の拍手。
3ヶ月掛けて練習してきた曲が結実した瞬間。
指揮者の塚田さんも温かい拍手を送ってくれている。
隣の山◯さんとちょっと目を合わせる。
顔が「やりきったね!」と言っている。
20分以上の長いメドレー。
最初に楽譜を見たときはどこから手を付けていいか途方に暮れた。
毎日練習して、フルート教室も通常のレッスンを中断してこの曲に取り組んできた。
先生の応援ぶりは、通常30分のレッスンを1時間に伸ばしてくれたり、夕方も時間があればいらっしゃいと、時間も手間も惜しまずバックアップしてくれた。
まだ感慨にふけってはいられない。
エンディングは会場も含めて全員での合奏・合唱。
フルートを持ってこられた方はフルートで、そうでない方は歌詞を見て合唱。
ステージ上からは会場の声はちょっと分からなかったが、会場は完全に一体となって響き渡ったのだろう。
会場からも拍手の嵐。
ステージからも拍手を返し、お互いに手を振って、一体感を共有したことを喜びあった。
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